「 ボクのズツウ 」








  バングラディッシュの首都、ダッカに向かう飛行機の中、ボクの頭は痛くなった。

  飛行機の名前は、ビーマン・バングラディッシュ・エアライン。ボクの頭の痛みはこんな感じだった。
 
  うー、頭が痛いなあ、なんだかミシミシするぞ、と思っていたら、頭蓋骨、というか人間の身体には正中線って、有るよね。この正中線に沿って、ボクの頭蓋骨が、表皮の下の筋肉のそのまた下で、徐々に左右に開いてゆくんだ。メリッ、メリメリッと、ゆっくり時間をかけて。
  これにはボクもびっくりして、ボクの頭蓋骨がこれ以上離れてしまわないように、慌てて両手でコメカミと後頭部を押さえてみた。けれど、それでもどうしても、頭蓋骨の分離が止められないんだ。その隙間は既に五センチはいっただろうか、当然ボクの頭は割れるように痛かった。それはそうだよね、実際、割れてんだから。
  そして、ボクの脳ミソがその新しく生まれた隙間から、トロン、て流れ出てきたんだ。
ボクはさらに慌てたね。だって、自分の脳ミソが頭蓋骨と筋肉の間を、トロントロン流れているんだよ。ボクは気を落ち着かせて、その脳ミソをゆっくりじっくり観察してみた。すると、ボクのそれは、どうやら普通のそれとは違っているようだった。   ボクのそれは「エビ」だった。 どー見てもエビだった。   桜エビだか車エビだか、はたまた白手長エビだか良くは分からないけれど、半透明の薄いピンク色をした小さな可愛いエビちゃんだった。 (ちなみに巻き髪の女の子ではない、念のため)

  その小さな可愛いエビちゃん達が、ボクの頭蓋骨の隙間から、トロン、トロロンて流れ出てくる。すくっても、すくっても指の間からチュルリチュルリと滑り落ちる。
あー、どうしたものだ、と困り果てていると、やがて、自然に頭蓋骨の分離が止まった。
そして今度は徐々に元に戻り始めた。助かったのか?しかし、それはそれで良いんだけれど、たぶんボクの脳ミソであるはずのエビちゃんが、骨と骨の間に挟まれてプチン、プチプチプッチン、て、おい!

  幸か不幸か、エビが鋏まれて潰れる時に痛みは感じなかった。そしてボクの頭蓋骨はすっかり元どおりに収まり、ボクのズツウもそれきり治ってしまった。 飛行機は間もなくして、無事ダッカに到着した。
  それにしてもボクには多少の不安が残っていた。
僕の脳ミソであるはずの、潰されてしまったエビちゃん達は一体、何処に行ってしまったのだろう?これ以上ボクの記憶力が落ちる事は、既に致命的ですらあったのに、、、