「 『動物園』という名の恋愛小説 」











  僕はある時期、雨の日の動物園によく足を運んだ。

  特に雨の日が好き、とか動物園が好き、とかいう訳でもなかった。
ただ彼女が、休みの日の朝、雨が降るときまって、
  「ねえ、動物園に行こう」と言い出すのだった。

  僕は特に断る理由もなかったので、その彼女の提案に素直に従った。

  彼女は雨の為に空いている動物園と、雨に濡れそぼる、
  普段よりも少しだけおとなしげな動物達を見るのが好きだった。

  雨の中では普段は獰猛な猛獣達も、幾分勢いが無い様に見えた。
  彼女はその中でも特にキリンが好きだった。

  雨に打たれ、その長い首をうなだれて寂しそうな目で遠くを見つめるキリンの姿を見ると、僕はたまらなく切ない気持ちになるのだが、
  「それが、いい」と彼女は言うのだった。
                  

  僕はこの数年、動物園に行っていない。
雨の日にはもちろん、晴れた日にさえ僕が動物園に足を運ぶことは無かった。

  たぶん、僕はもう二度と動物園に行くことは無いだろう。